抵当権抹消登記の必要書類

抵当権抹消登記の必要書類

抵当権抹消登記の申請人

住宅ローンの完済をした場合、金融機関(抵当権者)指定の司法書士に抵当権抹消登記を依頼する場合は、抹消登記費用がいくらかかるかは別にして、抵当権を抹消登記するための所有者の委任状を金融機関に渡せば、何が必要書類かを考える必要はありません。

ですが、自分で抹消登記を申請するか、自分の知り合いの司法書士に依頼する場合は、抹消登記をするための書類をある程度、考えておく必要があります。

抵当権抹消登記申請は、抵当権者と所有者の共同申請ということになっています。
すなわち、抵当権抹消登記を申請する申請人は、抵当権者と所有者です。

抵当権抹消登記の申請を所有者が登記申請上の権利者で、抵当権者が登記申請上の義務者になります。
ですから、所有者、抵当権者それぞれが用意する書類というものがあります。

「所有者」ということですので、債務者ではありません。
もっとも、債務者と所有者が同じであれば、その人が申請人となります。
所有者が複数いる場合の共有の場合、基本的には、共有者全員の押印が必要です。押印できない人がいる場合、権利者として共有者の一人の押印で抹消登記を申請できます。ただし、登記申請書には、共有者全員の住所氏名を記載します。

根拠は、次のとおりです。

民法(共有物の管理)第二百五十二条 共有物の管理に関する事項は、前条の場合を除き、各共有者の持分の価格に従い、その過半数で決する。ただし、保存行為は、各共有者がすることができる。

民法 | e-Gov法令検索

抵当権を抹消登記申請する行為は、共有者の「保存行為」として認められるということです。過去、何回も共有者の1人から申請して完了しています。もっとも、できるだけ共有者全員の署名・捺印をいただいていますが、やむを得ない場合は、共有者の1人の署名・捺印で申請しています。

所有者が死亡している場合

所有者が死亡している場合(単独所有の場合)、 相続登記(不動産名義変更)をした後でないと、抵当権抹消登記ができません。なぜなら、所有者としての記名・押印ができないからです。記名・押印ができるのは、現に生存している人に限られます。

例えば、次の事例の場合は、どうでしょうか。
土地所有者:A単独名義(Aが死亡している場合)
建物所有者:AとBの共有名義 (Aが死亡している場合)
この場合、土地の所有名義がA一人単独名義であるので、Aについての相続登記(不動産名義変更)をしてからでないと、抵当権抹消登記をすることができません。

土地も建物も、 AとBの共有名義 (Aが死亡している) の場合は、Bが保存行為としてB一人で抵当権抹消登記ができます。

次を参考にしてください。
名義人が死亡したときの抵当権抹消登記(方法)
共有者の一人から抵当権抹消登記申請

抵当権抹消登記をするための必要書類

基本的に必要な書類

抵当権を設定登記したときと抹消登記するときで、抵当権者、所有者双方の事情が変わっていない場合
所有者(ご自分で用意するもの:基本的には「認印」)
(1)抵当権抹消登記申請用の委任状 (司法書士に依頼する場合は司法書士が作成します。)
   所有者が署名、押印します。押印は認印でよいことになっています。
   自分で登記申請する場合は、この委任状は必要ではなく、
   抵当権抹消登記申請書(ご自分で申請する場合はご自分で作成します。)に記名、押印することになっています。
抵当権者(金融機関が用意する書類)
(1)抵当権抹消登記申請用の委任状
(2)抵当権解除証書、弁済証書などの登記原因証明情報
(3)抵当権を設定登記したときの登記所が押印した抵当権設定契約書
   または、登記所が発行した抵当権設定の登記識別情報(通知)

所有者の住所(氏名)が変更している場合

所有者の住所(氏名)が変更している場合は、住所(氏名)変更登記を抹消登記と一緒に申請しますが、登記申請の順番は、住(氏名)所変更登記を先にします。
(1)基本的には、住民票(氏名変更の場合は、戸籍謄本と住民票(本籍地記載))
   住民票で住所の経過を証明できない場合は、
   住民票の除票や戸籍の附票、上申書、印鑑証明書、権利証など
(2)所有権登記名義人住所(氏名)変更登記用の委任状(司法書士に依頼する場合は司法書士が作成します。)

海外在住の方が住所変更している場合は、海外在住日本人の住所変更登記を参考にしてください。

抵当権抹消登記申請に必要な金融機関の書類の有効性

抵当権抹消登記をしておかないと

これから述べるように、住宅ローンが完済した後、金融機関から抵当権抹消登記書類を受け取った場合、1年、2年そのままの状態で抵当権を抹消登記をしない場合は、難しい作業が必要となってしまいますので、早めにに抵当権抹消登記手続きをした方がよいでしょう。

また、金融機関から抵当権抹消登記書類を受け取っていたが、これを紛失してしまった場合、改めて金融機関に抵当権抹消登記に必要な書類一式の再発行をお願いすることになります。この場合、通常の抹消登記手続きとは異なる手続きが生じてしまいますので、いずれにしましても、 早めにに抵当権抹消登記手続きをした方がよいでしょう。

抵当権抹消登記の必要性を参考にしてください。

金融機関の書類の有効性

金融機関(抵当権者)から提供される抹消書類の中で、その書類の有効性が決められている書類があります。
この書類の有効性が求められる書類は、次のとおりです。
(1)抵当権解除証書(金融機関によっては登記原因証明情報、弁済証書の場合もあります。)
(2)委任状(金融機関が発行するもの)

普通、住宅ローンの借り入れは金融機関で行います。金融機関によっては、実際の抵当権設定登記は、保証会社が抵当権者となっている場合があります。抵当権者が保証会社となっている場合であっても、抵当権抹消登記書類は、住宅ローンを借り入れた金融機関(銀行など)から受け取ることになります。

上記(1)抵当権解除証書(2)委任状には、金融機関(または保証会社)の代表者(または代理人)が記名・押印します。
この記名・押印した人が「 記名・押印する 資格のある人」でなければなりません。
この 「 記名・押印する 資格のある人」 は、原則、登記申請の時点で 「 記名・押印する 資格のある人」 である必要があります。このことは、その 金融機関(または保証会社) の登記されている「会社法人の登記記録」で確認します。

登記申請時点で、金融機関(保証会社)の代表者(または代理人・支配人)として「 記名・押印する 資格のある人」が 上記(1)抵当権解除証書(2)委任状 に記名・押印されているのであれば問題ありません。
このことは、不動産の所有者が司法書士に抵当権抹消登記を依頼した場合、司法書士が 「会社法人の登記記録」で確認します (実費:334円) ので、これらの書類が有効であるかどうかを判別できます。もっとも、所有者ご本人でも、登記所(どこの登記所でも)で確認することはできます。

金融機関(保証会社)の代表者(または代理人・支配人)として「 記名・押印した人」が登記申請時点で記名・押印する 資格がなかった場合

上記(1)抵当権解除証書(2)委任状に「記名・押印した」金融機関(または保証会社)の代表者(または代理人・支配人)が、登記申請時点で記名・押印する資格がなかった場合の方法は、次の二通りです。
この 「 記名・押印する 資格のある人」 は、原則、登記申請の時点で 「 記名・押印する 資格のある人」 である必要があるからです。

1の方法:登記申請書に、現在「 記名・押印する 資格のある人」と「記名・押印した人(現在資格のない人)」を記載します。
  1. 「現在の代表者(代理人)」を「会社法人登記記録」で確認します。
  2. 登記申請書の義務者(金融機関など)の表示に「現在の代表者(代理人)」を記載します。
  3. 「記名・押印した人(現在資格のない人)」 がいつからいつまでその資格があったのかを「会社法人登記記録」で確認します。
  4. 「その他の事項欄(どこでも分かる場所)」に次のように記載します。
    (記載例)登記義務者の代表者(旧代表取締役 横浜右衛門)の代表権限は消滅しているが、代表権限を有していた時期は、平成26年6月24日から平成29年6月27日である。(①平成26年6月24日就任、②平成27年6月25日重任、③平成28年6月28日重任、④平成29年6月27日退任)

上記の方法の根拠は、次のとおりです。

民法(委任の終了事由)第六百五十三条 委任は、次に掲げる事由によって終了する。

 委任者又は受任者の死亡

 委任者又は受任者が破産手続開始の決定を受けたこと。

 受任者が後見開始の審判を受けたこと。

民法 | e-Gov法令検索

(1)抵当権解除証書(2)委任状に「記名・押印した」金融機関(または保証会社)の代表者(または代理人)が 、抵当権抹消登記の申請時点で「 記名・押印する 資格 (代表権限または代理権限)」がないとしても、民法上の「委任の終了事由」に該当しないため、解除証書と委任状に記名・押印したことで、なお、委任が継続していると考えることができるから、これらの書類は、有効な書類として登記所でも認めているのが現状です。過去、数回この方法で登記が完了しています。


この方法でできない場合は、次の方法で行います。

2の方法:金融機関で解除証書と委任状を差し替えてもらう

1の方法ができない場合、金融機関で次の書類を差し替えてもらいます。
(1)抵当権解除証書(金融機関によっては登記原因証明情報、弁済証書の場合もあります。)
(2)委任状(金融機関が発行するもの)

金融機関では、現在「記名・押印をする資格のある人(代表者または代理人)」の記名・押印のある書類を再発行してくれます。再発行してくれる期間は、おおよそ2週間ほどです。
この際、完済時に受け取った書類一式を金融機関に持参すれば、金融機関も分かりやすと思います。

ということで、住宅ローンが完済した後、金融機関から抵当権抹消登記書類を受け取った場合は、早めに抵当権抹消登記手続きをした方がよいでしょう。
また、金融機関から抵当権抹消登記書類を受け取っていたが、これを紛失してしまった場合、改めて金融機関に抵当権抹消登記に必要な書類一式の再発行をお願いすることになります。この場合、通常の抹消登記手続きとは異なる手続きが生じてしまいますので、いずれにしましても、 早めにに抵当権抹消登記手続きをした方がよいでしょう。

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